進め方DXレベル 2〜4

システム会社に頼むほどでもない規模のDXの進め方

2026.10.19

DX(デジタルを使って仕事のやり方を変えること)と聞くと、システム会社に見積もりを取り、何か月もかけて仕組みを作るような大きな話を思い浮かべるかもしれません。けれども、日々の困りごとには、もっと小さな規模のものもあります。日報の打ち直し、ファイル探し、同じ質問への何度もの回答。システム会社に頼むほどではなくても、放っておくと毎日少しずつ時間を奪っていきます。そんな「小さな規模のDX」の進め方を、探す・試す・頼む見極め、の順にお話しします。

小さな規模のDXとは何か

ここでいう小さな規模のDXとは、次のような特徴を持つ取り組みです。

  • 困っている人が、社内の数人に限られている
  • 今ある道具(表計算、共有フォルダ、チャット、AIなど)で手を打てる
  • 失敗しても、すぐに元のやり方に戻せる
  • 社内の誰かが、ふだんの仕事の合間に進められる

地味に見えるかもしれません。しかし、こうした改善を積み重ねると、社内の情報が整い、次の大きな一歩の土台になります。DXレベルの段で見ると、2段目の「バラバラ社長」から、社内資料を使って特定の業務でAIの効果を出す4段目あたりまでの会社が、特に取り組みやすい進め方です。

困りごとは「口ぐせ」から探す

小さなDXの種は、社員の口ぐせの中に隠れています。口ぐせを聞いたら、その裏にある原因と、まず打てる手を考えてみましょう。

| よく聞く口ぐせ | 裏にある原因 | まず打てる手 | |---|---|---| | 「あのファイル、どこでしたっけ」 | 置き場所が決まっていない | 置き場所と名前の付け方を一つ決める | | 「最新のはどれですか」 | 同じ物が何部もある | 古い版を別の場所へ移す | | 「紙のを、もう一回打ち込みます」 | 同じ作業を二度している | 最初から打ち込める形にする | | 「前にも聞いたかもしれないんですが」 | 答えがどこにも残っていない | 答えを一行ずつ書きためる | | 「社長に確認してからにします」 | 判断が一人に集まっている | よくある判断のめやすを書き出す |

口ぐせは、困っている本人がいちばん自然に出す合図です。社長が「何か困っていることは?」と聞くより、ずっと正直に困りごとを教えてくれます。集めるときは、言った人を責めないことが大前提です。「探す時間がもったいない」と口にした社員は、むしろ改善の種を見つけてくれた人です。

一つ選んで、戻せる形で試す

候補がたくさんあっても、最初に手をつけるのは一つだけです。「毎日か毎週くり返している」「困っている人がはっきりしている」ものを優先します。

たとえば、現場の作業日報を紙に書き、事務所で表計算に打ち直しているとします。この場合の進め方は次のとおりです。

  • 新しい道具を探す前に、今ある物で考える:現場の人がスマートフォンから、今の表計算に直接入力できる形にする
  • 試す範囲と期間を決める:一つの現場で、二週間だけ試す
  • やめる基準を先に決める:入力に前より時間がかかる、と現場が感じたら紙に戻す
  • うまくいったら残す:入力のしかたを短い文章にまとめ、誰でも見られる場所に置く

特に大切なのが、やめる基準です。小さなDXの良さは、気軽に試せることにあります。合わなかったら戻してよい、と最初に決めておくからこそ、社員も安心して新しいやり方に挑戦できます。

試した後に、本人に聞く三つのこと

期間が終わったら、試した人に次の三つを聞きます。

  1. 前より楽になったことは何か
  2. 前より面倒になったことは何か
  3. このまま続けたいか、戻したいか

社長の感想ではなく、使った本人の答えで続けるかどうかを決めます。「面倒になった所」が直せそうなら、そこだけ変えてもう一度試すのも一つの方法です。

つまずきやすい所

  • 担当が決まっていない:「手が空いたらやろう」では進みません。誰が進めるかを決め、時間を確保します
  • 社長だけが張り切る:使うのは社員です。困っている本人に、変え方を一緒に考えてもらいます
  • 道具を増やしすぎる:困りごとごとに違う道具を入れると、今度は「どの道具に何があるか」が分からなくなります

今ある道具の使いどころ

答えを書きためる表

「前にも聞いたかも」が多い会社なら、誰でも書き込める表に「質問」「答え」「答えた人」の三つの列を作り、質問に答えた人が一行足すことから始められます。費用はかからず、続けるうちに会社の暗黙の決まりごとが言葉になっていきます。同じ質問が来たら、答える前に「表に載っていないか見てみて」と声をかけるのが定着のこつです。この表は、後でAIに社内のことを答えさせたいときの材料にもなります。

AIは、人が確かめる前提の手伝い役

ChatGPT のような文章を作るAIを触ったことがあるなら、手書きのメモを読みやすい文章に整える、表計算で「この列の合計を担当者ごとに出したい」ときの式の書き方を尋ねる、といった使い方ができます。頼むときは「お客様向けに、丁寧な言葉で、三行で」のように、誰に向けて、どんな形で欲しいかを添えると、直す手間が減ります。最後は人が目を通して直す前提です。お客様の個人情報や社外秘の情報を入れてよいかは、使っているサービスの決まりを確かめ、社内でルールを決めてからにしましょう。

社内の工夫で届かなくなったら

小さなDXを続けていくと、社内の工夫だけでは届かない場面にも出会います。

  • 表計算のファイルが増えすぎて、つなぎ合わせるのが大変になった
  • 複数の人が同時に入力すると、上書きや食い違いが起きるようになった
  • お客様に直接使ってもらう画面が必要になった

こうした兆しが見えたら、仕組みとして整える段階に来ています。それまでに積み重ねた小さなDXは無駄になりません。どんな情報を、誰が、どう使っているかが整理されているので、外に頼むときの話がずっと具体的になります。試した記録や、やめた理由も、立派な材料です。

外に相談する前に、次のものを手元にそろえておくと話が早く進みます。

  • 困っている仕事の今の流れ(誰が、いつ、何をしているか)
  • 使っている表計算やファイルの一覧と、それぞれの置き場所
  • 社内で試したことと、うまくいった点・いかなかった点
  • 新しい仕組みで「無いと困ること」

これがあれば、相手にこちらの事情を一から説明する手間が減り、見積もりや提案も比べやすくなります。

今日からできること

今日から一週間、社内で聞こえた「あれどこ?」「もう一回打ちます」といった口ぐせを、ノートに書き留めてみてください。言った人と場面も一言添えます。一週間後に見返して、上の表の「まず打てる手」に当てはめてみると、どの困りごとから手をつけるべきかが見えてきます。

まとめ

  • 小さなDXは、今ある道具と社内の工夫で進められる
  • 困りごとは社員の口ぐせから探し、原因と打ち手を考える
  • 一つだけ選び、範囲と期間とやめる基準を決めて試す
  • 答えを書きためる表やAIの下書きは、今日からでも使える
  • 社内の工夫で届かなくなったら、仕組みとして整えるときと考える

TaskMate では、業務の棚卸しから一緒に行い、今の段と目指す段を決めて一段ずつ進めます。月1回の伴走コンサルを行う月1回プラン(月額55,000円・税込、打ち合わせとエンジニアの作業を合わせて月10時間)から始めることもできます。まずはDXレベルを相談するからお気軽にどうぞ。

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