AI活用DXレベル 4

社内資料をAIに読ませて、
業務に使う

2026.10.19

新しく入った社員が同じ手順を何度も先輩に聞きに来る、お客様から説明書に書いてあることを電話で尋ねられる。こうした「資料はあるのに人が答えている」仕事は、自社の資料をAIに読ませることで、AIに任せられる候補になります。これは、DXレベル4「AI実務社長」の中心になる取り組みです。この記事では、社内資料をAIに読ませて業務に使うための進め方と、気をつけたい点を取り上げます。

社内資料を読ませると、AIの答えはどう変わるか

AIに資料を読ませるというのは、質問に答えるときの「手元の参考書」を渡すようなものです。

たとえば、「この商品は屋外で使えますか」と聞いたとします。資料がなければ、AIは似た商品についての一般的な話を返すだけです。けれども、自社の商品説明書を読ませておけば、その説明書に書かれた条件をもとに答えます。答えの主な根拠が、世の中の一般論から、自社の資料に移るのです。

ここでいう「読ませる」は、AIそのものに資料を覚え込ませて作り変えることではありません。よく使われるのは、質問が来るたびに、関係しそうな箇所を資料の中から探し出し、その部分を見ながら答えさせる仕組みです。だから、資料の中で答えが見つけやすいほど、答えも的確になります。

この仕組みを使うと、これまで「詳しい人に聞かないと分からなかったこと」を、資料をもとにAIが答えられるようになります。詳しい人の手を止める回数が減り、聞く側も相手の都合を気にせずに確かめられます。

ただし、AIが答えられるのは、読ませた資料に書いてあることの範囲です。資料に書かれていないことや、資料が古くなっていることまでは、AIには分かりません。この性質を押さえておくことが、うまく使うための出発点です。

向いている業務、向いていない業務

社内資料を使ったAIは、どの業務にも同じように効くわけではありません。向き不向きがあります。

向いている業務

  • 新しく入った社員からの「これはどうすればいい?」に答える社内の相談窓口
  • お客様からの問い合わせに対する回答文の下書きづくり
  • 過去の提案書や企画書を探し、似た案件の内容を引き出す作業
  • 社内の決まり(休暇の取り方、経費の申請方法など)の案内

共通しているのは、答えの元になる資料が社内にすでにあり、同じような質問が何度も繰り返されることです。

向いていない業務

  • 資料がほとんど存在しない業務
  • 毎回、その場の状況を見て判断が変わる業務
  • 答えを間違えると、取り返しのつかない影響が出る業務

向いていない業務に無理に使うと、「AIはあてにならない」という印象だけが残ります。最初は、向いている業務の中から一つを選びましょう。

読ませる資料を選び、整える

AIの答えの質は、読ませる資料の質で決まります。資料を選んで整える作業が、この取り組みの大部分を占めると言ってもよいくらいです。

資料を選ぶ

選んだ業務に関係する資料だけを集めます。関係のない資料まで読ませると、AIが的外れな資料をもとに答えてしまうことがあります。

古い版を外す

同じ内容の資料に、古い版と新しい版が混ざっていないかを確かめます。古い料金表や、改訂前の手順書が残っていると、AIはそれをもとに答えてしまいます。

矛盾を解消する

資料Aと資料Bで書いてあることが違う、ということは起こりえます。人なら事情を知っていて「こっちが新しい」と判断できますが、AIにはどちらを信じるべきか確かには分かりません。食い違いを見つけたら、どちらが正しいかを決めて直しておきます。

書かれていない「当たり前」を足す

社内では当たり前すぎて、資料に書かれていないことがあります。たとえば「土日の問い合わせへの返事は翌営業日」といった決まりです。AIに答えさせたい内容なのに資料にないものは、この機会に書き足します。

資料の形にも少し気を配ると、AIが読み取りやすくなります。一つの資料には一つの話題だけを書く、見出しをつける、写真や図だけで説明している箇所には文章を添える。人が読んで分かりやすい資料は、AIにとっても読みやすい資料です。

答えをうのみにしない仕組みを作る

資料を読ませても、AIの答えが常に正しいとは限りません。資料を読み違えたり、資料にないことを、もっともらしく補って答えたりすることがあります。

そこで、次のような工夫を組み合わせます。

  • AIに、答えの根拠にした資料の名前や箇所を一緒に示させる
  • 資料に書かれていないことは「分からない」と答えるように指示しておく
  • お客様に出す文章は、人が目を通してから送る手順にする
  • おかしな答えを見つけたら、記録して資料の直しにつなげる

特に一つ目が大切です。根拠が示されていれば、確認する人はその資料を開いて照らし合わせるだけで済みます。根拠のない答えは、確かめるのに手間がかかり、結局使われなくなっていきます。

情報の扱いで気をつけたいこと

社内資料をAIに読ませるということは、社内の情報をAIのサービスに渡すということです。始める前に、次の点を確かめておきましょう。

  • 使うAIのサービスで、入力した情報がどう扱われるか(AIの学習に使われる設定になっていないかなど)の設定と契約
  • 読ませてよい資料と、読ませてはいけない資料の線引き
  • AIを使う社員の範囲と、それぞれが見てよい資料の範囲

社員の個人情報や、お客様との契約の詳細などは、慎重に扱う必要があります。一般の社員が見られない資料をAIに読ませると、AIへの質問を通じて、本来見られない人に内容が伝わってしまうおそれがあります。人に対する見られる範囲の決まりは、AIを通したときにも同じように守られるようにしておきます。最初は、全員が見てよい資料だけを読ませるのが一番確実です。

小さく試して、少しずつ広げる

準備が整ったら、いきなり全社で使い始めるのではなく、少人数で試す期間を設けます。

  1. 選んだ業務の担当者数人だけで、数週間使ってみる
  2. AIに聞いた質問と、その答えが役に立ったかどうかを簡単に記録する
  3. 役に立たなかった答えについて、原因が資料にあるのか、聞き方にあるのかを見分ける
  4. 資料や聞き方を直してから、使う人の範囲を広げる

記録といっても、表に「質問」「役に立ったか」「気になった点」を一行ずつ書く程度で十分です。この記録が、資料のどこが足りないかを教えてくれます。

試す期間を経ると、もう一つ分かることがあります。それは、資料を最新に保つ担当を決めておく必要性です。商品の仕様や社内の決まりが変わったのに資料が古いままだと、AIは古い内容で答え続けます。資料を直したら、AIに読ませている分も入れ替える。この手順を、誰の仕事にするのかを決めておきましょう。

まとめ

  • 社内資料を読ませると、AIの答えの主な根拠が一般論から自社の資料に移る
  • 資料がそろっていて、同じ質問が繰り返される業務から始める
  • 資料は選び、古い版を外し、矛盾を直し、当たり前を書き足して整える
  • 根拠を示させ、分からないことは分からないと答えさせる
  • 入力した情報の扱いと、見てよい範囲を始める前に決めておく

準備の第一歩として、社内で一番よく聞かれる質問を三つ書き出し、その答えが今どの資料に書いてあるかを確かめてみてください。答えがどこにも書かれていなければ、それがAIに読ませる前に整えるべき資料です。

TaskMateでは、社員が社内資料を使い、特定の業務でAIの効果を出すレベル4「AI実務社長」を目指す取り組みも、資料の整理から一緒に行います。どの業務から始めるかを一緒に考えたい方は、DXレベルを相談するからどうぞ。

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